絵ノファイル(ENOphile)
榎俊幸 / 作品集 (ENOKI Toshiyuki / works)

Blanc

「THE WHITE」・100F
「THE WHITE」・100F(1999年)
「この雪のように白く、この血のように紅く、そしてこの黒檀のように黒い子供が欲しい」。
やがて生まれた子供は、雪のように白く、血のように紅く、そして黒檀のように黒い髪の娘だった。
こんな強烈な色のイメージで始まる物語が、グリム童話の「雪白」である。
この物語の中には魔術(中世ヨーロッパの呪術)を使う継母が登場する。
殺害したはずの雪白が蘇生することを恐れた継母は、死者の蘇りを封じる3つの呪いをかける。
「THE WHITE」(部分1)
「THE WHITE」(部分1)
死者を埋葬する様子を描いた中世ヨーロッパの絵画を見たことがあるだろうか?
それは遺体を白い布で包んで、その上から紐で雁字搦めに縛り上げている絵だ。
墓の中で死者が生き返ったとしても、動き出すことが出来ないように押さえ付けてしまう。
これが一つめの呪いの方法である。
物語の中ではドレスの胸紐を使って、少女の雪のように白い肌を締め付ける。
呼吸が止まって仮死状態の少女を蘇生させるのが七匹の一寸法師(7人の小人)である。
彼らは胸紐をちぎり、少女は息を吹き返した。
二つめの呪いでは櫛を使う。
古代より死者の魂を鎮めるための副葬品として、櫛を遺体の身に付けさせていた。
物語の中では毒を塗った櫛が、少女の黒檀のような黒い髪に突き刺さる。
だが、またしても7人の小人達が櫛を抜き取り、少女は麻酔毒から醒めることが出来た。
 
「THE WHITE」(部分2)
「THE WHITE」(部分2)
三つめの呪いでは、生命の源であり罪の源でもある林檎の実が使われる。
継母は林檎の実の片側を赤く、もう片方の側を青く塗り分けた。
そして、その赤い方の側だけに毒を仕込む。
継母は林檎を二つに割り、青い方を自分が食べ、赤い方を少女に手渡した。
美味しそうな林檎の誘惑は、少女の血のように紅い唇を開かせてしまう。
しかし、禁断の果実を口に入れた少女だが、それを体の奥まで受け入れることはしなかった。
やがて男性からの愛を受けることによって、この呪いは解かれる。
 
「THE WHITE」(部分3)
「THE WHITE」(部分3)
不思議なことに出雲神話にも、これらと類似した呪術が記されている。
「蘇り(よみがえり)」、その語源は「黄泉帰り」→「黄泉の国(地下世界)」からの帰還を意味している。
○死んだはずの「いざなみ」は、地下深い洞穴の中で八匹の子鬼達に体を貪り食われていた。
 それを見た「いざなぎ」は、恐ろしくなって「いざなみ」の救出を諦め、地上に逃げ帰ろうとする。
 後を追って来る「いざなみ」と八匹の子鬼達に対して「いざなぎ」は封じの呪術を使う。
①最初は蔓草を投げ付ける。
 蔓草は紐のように追っ手の体に絡み付き、その動きを押さえ付けようとする。
 しかし、子鬼達によって蔓草は喰いちぎられてしまう。
②次に櫛を投げ付ける。
 櫛は竹の子に形を変えて追っ手の道を塞ごうとするが、またしても子鬼達に喰われてしまう。
③最後には命の源である桃の実を投げ付ける。
 追っ手達が夢中になって桃の実を食べている間に「いざなぎ」は地上に逃げ帰ることが出来た。
●呪縛という言葉がある。
 物理的な拘束では無く、精神的に拘束する力のことだ。
 縛り付けるイメージや禁を犯すイメージを催眠的に深層心理にプログラムするのである。
 それは精神回路に潜在し、何かのパスワードで発動されるコマンドなのだ。
 
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テーマ:絵画 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

4の付く日は、荘厳なアートに触れられる日。
グリム童話、特に『白雪姫』は、
お姫様、七人の小人、魔法の鏡、継母、王子様
と、ビジュアルアイテム(?)が沢山登場する、
惹きが強い物語ですよね。
それを更に膨らませて、この様な魅惑的な絵を
描くことの出来るアーティストの方の感性って、
どんな風にして生まれるんでしょう?

そして、旧約聖書にも登場し、
ダヴィンチコードでは重要なキーワードとなり、
ニュートンの研究の発端となった神秘の果実、
を、奇遇にもクローズアップして描かれた事、
個人的に嬉しく思います。
【2008/02/04 23:50】 URL | “林檎。” #-[ 編集]
この「WHITE」さんは
信じて待っている、って感じですね。
呪うほどの思い…怖いというより悲しい。
【2008/02/05 00:51】 URL | マリ #-[ 編集]
ものすごく想いの込められた作品だなぁと…
素晴しいです。いろんな想像世界が浮かんできます。
【2008/02/05 08:14】 URL | 深水ドリィ^^ #kNaGlJJo[ 編集]
一枚の絵がストーリーを語っているんですね。
美しい絵にため息が出ます。
【2008/02/05 22:25】 URL | ひろの #qHG4eVTQ[ 編集]
細部に手の込んだ作品なのですね。今回は日本神話と海外の童話…奥深いです。
【2008/02/06 21:55】 URL | 岩崎 高宗 #-[ 編集]
美味しそうなリンゴ!食べたくなりました。
絵の中心の、ここだけくっきり鮮やかに描かれていることに、象徴みたいなものを感じました。
【2008/02/07 13:03】 URL | みやじぃ #-[ 編集]
皆様、たくさんのコメントありがとうございます。
 「スノーホワイト」はグリム童話の中で最も人気の高いお話のひとつです。
 でも、ちゃんと原作を読んだことのある人は少ないのではないでしょうか?
 子供向けの絵本などでは省略されてしまっている部分も多いのです。
 そこには人の心の奥に潜む闇の部分が描かれています。
 おとぎ話はとても不思議で、まるで悪夢を見ているようです。
【2008/02/08 19:00】 URL | eno #hdP62FSI[ 編集]

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